※これは Instagram (@takaharu_hasegawa)  に投稿した話の最終回です。


07:15 小田急線に乗り込み、都庁へ向かう。


新宿に近付くにつれて、ランニングウェアを纏う人が多く目に付くようになる。

西口で 菅原トレーナー率いるABCR応援団に挨拶してから
ゲートへ向かう予定でいたのだけれど
雨対策に時間を取られたため
南新宿からの最短ルートで行く事にした。

数日前のレッスンで「ゲートに入るとトイレも並んで大変でしょうから。」と、お声をかけて頂いてた都庁近くに住むKさん宅のトイレをお借りした。

共有スペースでレース用シューズに履き替え
コンビニで買ったカステラを食べ
慌ただしかった朝の時間に、ひと息つけた。

ゲートへ向かう途中
京王プラザホテルの前をウォーミングアップをする猫ひろしを発見。
表情からマラソンにかける気迫を感じた。

08:11

ゲートクローズ直前

間に合った。

手荷物検査を済ませゲートをくぐり、その手荷物をトラックに預け、
スタートエリア「J」へ向かう。

スタートエリア近くの給水所でもらった水でアミノ酸を流し込んだ。
雨は降り続いていて気温も低い。
途中トイレには行きたくないので、水分は控えめにした。

スタートエリアはすでに満員電車状態。
一番後ろの左端を陣取りスタートを待つ。

ウォーミングアップもストレッチもまともにできなかった。

スピーカーから聞こえてくるMCの声とBGM。
セレモニーが始まった。
やがて列が少しずつ前に動き始め、スタートの号砲とともに花火が上がる。

そんなに大きくない歓声も上がった。笑

防寒に着ていたレッグウォーマーやスウェットパンツを洋服ポストに投げ入れてスタートラインに向かう。

いよいよ都庁とスタートゲートが見えてきた。

ここで東京マラソン経験者のYさんからアドバイスもらっていた
「都庁横のトイレ」に駆け込んだ 。

それが功を奏したか、1週間のカフェイン抜きが良かったか、
レース中は全くトイレに気を取られることはなかった。


東京マラソン2019がスタートした。

最初の6km は下ると聞いていたから、スピードが出ないように慎重に走る。
新宿西口のガード下を抜ける時

今、東京を走れてるんだと実感した。

ドナルドマクドナルドハウス のチャリティーウェアを着たサイヤ人ヘアのランナーに「頑張りましょう」と声をかける。「制限時間ギリギリの完走を目指します!」と返事が来た。

人混みを掻き分けるように右へ左へ蛇行しながら走った。
これも後々、足に疲れがきた原因かもしれない。

ABCR

ABCR応援団の月のバルーンが目に入ってきた。
近づいて沿道の声援をいっぱいに浴びる。

本当に有難い。

コースにはYMCAが流れ、それに合わせてランナー達が踊る。

日本橋を過ぎるあたりで 招待選手やエリート選手達とすれ違う。
初めて間近で見るランニングフォーム。
カッコ良かった。

すぐあとに集団を引っ張る 猫ひろしが来た。
なぜか大きく見えた。


雷門を過ぎた辺りから
橋のアップダウンが多く
坂の対策をしてこなかった脚が悲鳴を上げた。

そして、未知の世界の20~25kmゾーンへ走る。

やばい攣りそう!
いや攣ってる!

足裏の荷重を変えてみよう!
お!治った!
いや、また攣ってきた!

止まってストレッチするランナーや
エアサロンパスを差し出す沿道の方々
「ストレッチします」とカードを掲げる整骨院の誘惑

止まったら終わり。

ぜったい完走出来る!とマントラのように繰り返し
その後の10kmは、ひとりでそんな攻防をしていたんじゃないだろか。

沿道に繰り返し現れる目立つ応援者や 仮装するランナー。

給水ポイントのボランティアの方々の笑顔と声援。
その全てが走る力になった。

脚は疲れと冷えであらゆる所が攣っていて限界だった。

33km 芝公園周辺

月のバルーンが見えてきた。
暗い夜道を照らす月明かりの様に。

ABCR応援団が待ち構える。
みんなが満面の笑みで「がんばれ」と
弱音を吐きに近づいた僕を跳ね返した。

足の痛みに弱音を吐く姿

本当は、ストレッチして欲しかったのだけど
みんなの笑顔を見たら、不思議と力が湧いてきた。

スント が知らせるlap timeは 7min/km。
このままではマズイと前に前に足を出した。

増上寺も東京タワーもサロンパス小屋にも
脇目を振らず通過して丸の内を目指す。
たまたま近くに走るのび太くんへの声援を一緒に浴びながら。

足は痛むが、気力は充分。
石畳の道に入り、沿道の声援もさらに大きくなり勇気をもらう。

ゴールが近くにあると感じ、
なんとなくこの長旅が終わってしまう寂しさが込み上げてきて
東京の名所をinstaライブ中継しようなんて
甘い考えで持ち込んだiPhoneを
ここで初めて取り出して動画を撮った。

42.195km 途切れることなく響く声援に、背中を押されてここまで来れた。

歩かずに走り切った。
それが自分にとっては人生レベルで大きな収穫だった。

そして、ゴール後の導線でもらったクリスタルガイザーが冷た過ぎて
早く家に帰って、温かいコーヒーが飲みたいと思った。

階段の下りでフルマラソンの過酷さを思い知らされた。
エレベーターやエスカレーターの有難さが身に沁みた。

東京は優しさに溢れた都市だと感じた。

東京マラソン2019は終わった。

photo by Noriko Takahashi

今度は誰かの為に走ってみるのも良いかもしれない。

おわり。